目次
中小企業にも拡大
既に昨年の4月に大企業では施行されている同一労働同一賃金ですが、今年4月には中小企業にも拡大していきます。
同一労働同一賃金に関わる法律「パートタイム有期雇用労働法」は何度も改正され、労働条件通知書の内容・賃金水準・契約の更新に関するルールなど様々な変更が加えられてきました。
特に「同一賃金」の部分で頭を悩ませた人事担当の方、経営者の方もいるのではないでしょうか。私自身も昨年は、取引先との賃金交渉をしましたが、なかなか痺れるものでした。スタッフの賃金を上げることになれば、それに伴い、取引先への請求も上げなければならないからです。
パートさん、派遣スタッフさんにしてみれば、時給アップは悪い話ではないですよね。
今回は、厚生労働省から発表されている内容を基に、3つのポイントをご紹介していきます。
労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
パートタイム労働者・有期雇用労働者は、「正社員との待遇差の内容や理由」などについて、雇用主に説明を求めることができるようになります。(※派遣スタッフの場合は、雇用主は派遣会社です。)
雇用主は、説明を求められた場合には説明をしなければなりません。 その際には、従業員に対する誠実な説明が求められます。解雇や減給、契約更新の解除などの労働者にとって不利益となる行動をとると問題になります。
実際の派遣会社の取り組みの一部としては、昨年4月から雇用契約への付属書類追加がありました。これは交通費、有給休暇等の説明が記載されており、これまで口頭ベースで聞かれたら答えるようなことも、予め記載説明するようになりました。
不合理な待遇差の禁止
パートタイム・有期雇用労働法では、同じ就業場所で同じ仕事をする正社員とパートさん・有期雇用労働者との間で、基本給や賞与などのあらゆる待遇について不合理な待遇差を設けることを禁止することが定められています。正社員とパートさん・有期雇用労働者の間で客観的にみて不合理な待遇の差があるようでしたら見直す必要があります。 基本給や賞与以外にも、役職手当、食事手当、福利厚生、教育訓練など、「任せている業務内容と責任に対して適切と認められるか」を確認する必要があります。
派遣(有期雇用労働者)の場合は、昨年4月に行われた内容として下記がありました。
- 取引先、スタッフへの内容説明
- 担当スタッフの職種の確認、一般賃金を越えていないスタッフの賃金の見直し検討
- 再検討した料金の見積書作成
- 見積書を基に、取引先への説明及び交渉(値上げ交渉) 等
一般賃金
賃金基本統計調査や職業安定業務統計をもとに、「基本給・賞与・手当」「通勤手当」「退職金」の3つに分けて算出されます。(時間外、休日、深夜労働による手当等は含まれない。)データは毎年更新されるため、一般賃金はデータ更新に伴い変化することになります。
基本給・賞与・手当
「基準値×能力指数×地域指数」と厳密にはこのような式で算出されます。
基準値に関しては、厚生労働省職業安定局長名の通達により、職種ごとの数値が出ており、どの仕事に該当しているかを確認していきます。
地域指数に関しても、都道府県、公共職業安定所の管轄地域別に数値が定められている為、あてはめていくだけです。あくまでも就業先の住所が基準になりますので、注意が必要です。
問題は能力指数ですが、これは勤続年数等により、数値が上昇していくものですが、派遣の場合だと、同じ派遣会社、同じ就業先に長くとどまらないケースが多く、基準があっても、なかなか数値化は難しいのが実情ではないでしょうか。
通勤手当
ここは非常に大きな点です。今まで交通費を出さない就業先が多くありましたが、改正に伴い、例がいなく全員出さなければならなくなりました。
「実費支給」か「一時間あたり72円」の選択制です。当たり前ですが、自転車通勤、徒歩については例外です。自動車、バイク、公共の交通機関を利用した通勤が、手当ての対象です。
通勤手当てについては、前回の記事でも触れているので、確認してみてください。
職場トラブルについて裁判外紛争解決手続が利用可能に
裁判外紛争解決手続を利用すると、雇用主とパートさん・有期雇用労働者間で発生したトラブルについては、当事者の一方または双方の申出があれば、裁判を行わず、非公開、無料で各自治体の労働局が問題の解決をサポートしてくれます。 企業側、従業員側の双方から労働局へご相談可能となっておりますので、職場でのトラブルの発生にはこれまで以上に注意が必要です。
まとめ
今回は、4月に全面施行のパートタイム・有期雇用労働法についてポイントを3つ紹介しました。
- 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
- 不合理な待遇差の禁止
- 職場でのトラブルについて裁判外紛争解決手続が利用可能
各種見直しが必要な場合には、雇用主とパートさん・有期雇用労働者との話し合いが必要な場合などもある為、少しでも参考になればと思い、投稿しました。
特に不合理な待遇差の禁止の部分の賃金については、ご注意いただければ幸いです。