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「働き方改革①」 有給・残業ってどうなるの? - 背景・目的・見直されたこと -

 

勤め先の上司から、このようなことを言われた経験はありませんか?

 

「働き方改革で、有給とらせなきゃだから、5日間どこかで取って欲しい。」、「来月から残業●●時間まででお願いね。」

 

「有給取れるのはいいけど、仕事がたまってしまう。」、「今まで残業代で稼いでたから給料が減ってしまう。」等。

会社に対して、または「働き方改革」自体に対しても思うことは色々あると思います。

 

また、会社側としては、「労働者不足なのに、残業させられない。」、「有給を取らせている余裕がない。」等、

理不尽に感じられてる方もいるのではないでしょうか。

 

私の会社でも実際に、「社員の残業時間の抑制」「派遣スタッフの有給取得の義務化」が行われました。

 

一見、労働者の働き方を、良い方向にしていく取り組みに映ります。しかし、残業時間内に仕事が終わらない人は、残業時間を誤魔化したり、有給取得日に仕事をしたりと本来の意味とは、かけ離れた現実が散見されています。

 

そもそも「働き方改革」とは、どのような「背景」があり、何を「目的」にしている改革なのでしょうか?

今回は、そんな皆さんのモヤモヤにお答えしたく、「働き方改革」について書かせていただきます。

 

働き方改革が推進される「背景」とは?

 

国が働き方改革をおこなう背景には、大きく3つの危機的背景があります。

 

  1. 少子高齢化による労働力不足
  2. 常態化する長時間労働による労働参加率の低下
  3. 働き方の多様化への対応の遅れ

 

少子高齢化による労働力不足

 

日本国の人口は、1967年に初めて1億人を超えましたが、2008年の1億2,808万人がピークでした。その後、2020年には1億2427万まで減少し、少子高齢化に歯止めがかかりません。ピーク時と比較すると、なんと約380万人も減っているのです。

これがどのくらいのインパクトかと言うと横浜市の人口が2020年で約370万人です。12年間で、横浜市の人口とほぼ同等数の人口が減少してしまったのです。

 

人口減少に伴い、労働の現役世代である生産年齢人口(15〜64歳)の割合も、1990年代後半から減少しています。

労働力の総数が減少し続けています。

「人口の減少→労働力の減少」が起こるとどうなってしまうのでしょうか。

 

  • 企業の生産性が低下
  • GDPの低下
  • 税収入の低下

まだまだありますが、いいことがありません。

国としては、どうしても労働参加率を向上させる必要性に迫られています。

 

女性、高齢者、障害者をはじめとする多様な人材の労働参加を促しているのは、一概には言えませんが、人口減少が一つの理由としてあげられます。

 

常態化する長時間労働による労働参加率の低下

 

日本では長年、「残業すること」、「休まないこと」が美徳とされてきました。

そのため、結婚・出産や介護を機にそのような環境で働き続けることができなくなり、退職する人が続出しています。この労働参加率の低下を招いた一つの理由です。

 

また長時間労働は、重大な健康面の問題を引き起こす可能性があります。過労死や精神障害・自殺は大きな損失です。労働環境が労働参加率を低下させているのです。

 

慢性的な人手不足と長時間労働が引き起こす労働力の損失は、日本経済に重大な影響を与え続けているのです。

 

 

働き方の多様化への対応の遅れ

 

1980年は共働き世帯が約641万世帯で、専業主婦世帯は1,114万世帯でした。男性は、外に働きに行き、女性は家庭を守るという生活が普通でした。

その後、1990年代にこれらは同等数になりました。

2020年の段階で、共働き世帯が約1,245万世帯で、専業主婦世帯582万世帯を大きく上回っています。

結婚や子育てをしながら、働き続ける女性が増えています。

また、今の時代は、会社組織に属さないフリーランスとして働く方や、本業はサラリーマンで、副業として他に仕事を持っていたりと、働き方は多様化してきています。

 

しかしながら、働く女性を例にすると、子供を預けて働きたくても、預け先がない等の問題があったりします。(待機児童の問題。)

国としては、労働参加率を上げたいのに、その環境が整備できていない対応の遅れが起こっているのです。

 

 

働き方改革の「目的」

 

 

「働き方改革が推進される背景とは?」の内容を踏まえて、国としては、3つの目的に向かって「働き方改革」を推進しています。

 

  1. 長時間労働の是正
  2. 正規・非正規労働者の不合理な格差の解消
  3. 多様化する働き方への柔軟な対応

 

これら1つ1つが最終目的ではありません。労働参加率を改善する大きな目的を達成する為の目的です。

私は、この部分の説明不足があると感じます。労働者、経営者が主旨背景を理解しないまま、現場に導入することで矛盾が発生している実態があるのではないでしょうか。

 

 

長時間労働の是正

 

労働力の損失をなく為には、労働者にとっての働きやすい環境を作らなければいけません。「長時間労働の是正=労働時間の適正化」なくして達成できません。

 

「残業すること」、「休まないこと」は、美徳ではありません。限度を超えた働き方が、労働者のメンタルヘルス不調や過労死の原因です。

 

その為、これまで曖昧な取り扱いをされてきた「時間外労働」にメスが入ることになりました。

 

「長時間労働を是正することで、労働力の損失を防ぎ、労働参加率を上げよう」という目的があったのです。

 

正規・非正規労働者の不合理な格差の解消

 

深刻化する人手不足を背景に、企業は今後、正社員だけでなく、多様な雇用に目を向け、幅広い人材の活用を実現する必要があります。

 

しかしながら現状、同じ仕事をしているにも関わらず、単に雇用形態の違いのみで待遇に格差が設けられるケースが多く、非正規という働き方へのマイナスイメージ、働く人の意欲低下を招いています。その格差を埋めるために考えられたのが「同一賃金同一労働」です。

過去記事「同一賃金同一労働」4月全面施行でもこちらについては触れております。

働き方改革を通じて、雇用形態に関わらない公正な待遇が確保されることで、働く意欲のある人が主体的に働き方を選べるようになります。

 

多様化する働き方への柔軟な対応

 

  • テレワーク
  • 時短勤務
  • 副業
  • フリーランス
  • 週休4日   

働く人が自分のライフスタイルに合わせて、前向きに働き続けるためには、さまざまな働き方への柔軟な対応が必要です。

 

これが実現されれば、今までで個々の事情で働けなかった方も労働に参加でき、企業の人手不足解消にも繋がります。

 

人材業界に身を置く私としても、この部分にはまだまだ可能性があると感じます。

 

例えば、お子さんがまだ小さい主婦の方の働き先もまだまだ少ないです。

企業側としては、依然としてフルタイム(週5勤務)の人材を前提条件として、求人しているところが多いです。

 

仕事の特性上、週3、4勤務では対応が難しいところがあるかと思いますが、この労働条件の緩和をすることで、応募者の数は格段に改善されていきます。

(参考:扶養内での働き方)

 

また、シニア層(60歳以上)の働き先もまだまだ少ないです。

 

これからの時代は、上記のような出産や育児をされてる方、シニア層向けの働き先の確保が急務です。国、企業が一体となって環境整備をしていかなければいけません。

 

 

働き方改革で「見直されたこと」

 

  1. 時間外労働の上限規制の導入
  2. 勤務間インターバル制度
  3. 年次有給休暇、年5日間の取得
  4. 月60時間超の残業の割増賃金率引上げ
  5. 労働時間の把握
  6. フレックスタイム制の調整可能期間の延長
  7. 高度プロフェッショナル制度
  8. 産業医・産業保健機能の強化
  9. 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
  10. 不合理な待遇差の禁止
  11. 裁判外紛争手続きが利用可能に

時間外労働の上限規制の導入

 

・適用時期 → 2019年4月1日

(中小企業への適用は2020年4月1日)

 

以前は、法律で残業時間の上限が設けられていませんでしたが、下記のように、設けられるようになりました。

  • 時間外労働の条件は、月45時間、年360時間まで。
  • 臨時的な特別な事情がなければ上限を超えてはいけない。

 

臨時的な特別な事情であり、労使合意がある場合の上限は下記になります。

  • 年720時間以内
  • 複数月の平均残業時間が80時間以内
  • 月100時間未満

 

違反すると「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科される可能性があります。

 

参考:上限規制の適用を猶予・除外する事業

適用時期 → 2024年4月1日

  • 自動車運転の業務
  • 建設事業
  • 医師
  • 鹿児島・沖縄県の砂糖製造業
  • 新技術、新商品等の研究開発業務(除外)

 

 

勤務間インターバル制度

 

施行:2019年4月1日 

前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に、休息時間(インターバル)を確保する取り組みです。

労働者が、生活時間や睡眠時間を確保することで、働き過ぎを防ぐ目的があります。こちらはあくまでも努力義務です。

 

 

年次有給休暇、年5日間の取得

 

適用時期 → 2019年4月1日

「労働者に年5日の年次有給休暇を確実に取得させること」が義務づけられました。

法定の年次有給休暇が10日以上付与される労働者が対象です。

過去記事 : 有給って5日取らないとダメ?

 

 

月60時間超の残業の割増賃金率引上げ

 

適用時期 → 2023年4月1日 

現在、中小企業の月60時間超の残業割増賃金率は25%です。

2023年4月からは大企業と同率の50%に引き上げられます。

 

 

労働時間の把握

 

適用時期 → 2019年4月1日

裁量労働制の適用者や管理監督者なども含め、すべての人の労働時間の状況を客観的に把握するよう、義務づけられました。

 

 

フレックスタイム制の調整可能期間の延長

適用時期 → 2019年4月1日

フレックスタイム制の労働時間の調整可能期間が1ヶ月から3ヶ月になり、より使い勝手がよくなりました。

 

 

高度プロフェッショナル制度

 

適用時期 → 2019年4月1日

高度な専門知識を要する業務で、職務の範囲が明確で、一定の年収要件を満たす労働者については、労働基準法の規定を超えた自由な働き方を認める制度です。

※労使委員会の決議および労働者本人の同意が前提。

 

 

産業医・産業保健機能の強化

 

適用時期 → 2019年4月1日

産業医の活動環境と労働者に対する健康相談の体制整備に努めなければなりません。

労働者の健康情報の適正な取り扱いを推進し、労働者が安心して職場における健康相談や健康診断を受けられるようにしなければなりません。

 

 

労働者に対する待遇に関する説明義務の強化

不合理な待遇差の禁止

裁判外紛争手続きが利用可能に

 

適用時期 → 2020年4月1日

(中小企業への適用は2021年4月1日)

 

「労働者に対する待遇に関する説明義務の強化」「不合理な待遇差の禁止」「裁判外紛争手続きが利用可能に」は、「同一賃金同一労働」4月全面施行でまとめさせていただいております。

まとめ

 

働き方改革が推進される「背景」

  1. 少子高齢化による労働力不足
  2. 常態化する長時間労働による労働参加率の低下
  3. 働き方の多様化への対応の遅れ

 

働き方改革の「目的」

  1. 長時間労働の是正
  2. 正規・非正規労働者の不合理な格差の解消
  3. 多様化する働き方への柔軟な対応

 

働き方改革で「見直されたこと」

  1. 時間外労働の上限規制の導入
  2. 勤務間インターバル制度
  3. 年次有給休暇、年5日間の取得
  4. 月60時間超の残業の割増賃金率引上げ
  5. 労働時間の把握
  6. フレックスタイム制の調整可能期間の延長
  7. 高度プロフェッショナル制度
  8. 産業医・産業保健機能の強化
  9. 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
  10. 不合理な待遇差の禁止
  11. 裁判外紛争手続きが利用可能に

 

いかがでしたか?

今回は、働き方改革が行われる「背景」・「目的」・「見直されたこと」をまとめさせていただきました。

 

普段、ニュース等で何となく見聞きしているだけだと、労働者・企業の視点で、部分的にしか捉えられないと思います。

背景から目的を知り、実際に見直されたことを確認していくことで、この「働き方改革」の全体像を掴むことができます。

 

私は、法律が改正されたから、「仕方なく実施し」、「仕方なく働き方を変える」のでは意味がないと感じます。

この改革を通じて、自分達が「どうしていくべきか」「どう環境に適応していくか」を主体的に考え、行動していくことが大切です。

 

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